2011年9月11日日曜日

日本のペットショップから子犬を助けた豪州女性。海外パピーミル実情

Echo News記事翻訳)

ケージの中の盲目の犬が子犬を産もうとしている。彼女の周囲には子犬と彼らの保育母が入れられた何十もの小さなケージがある。顔をうずめて座っている犬がいる。多くはもつれた被毛、皮膚病や目の感染症を患っていたり、病気の犬もいる。吠え声の騒音が耳をつんざき、アンモニア臭がひどい。

これがパピーミルである。あなたがペットショップで見かける多くの子犬が、その生涯をここから開始する。

電話帳でパピーミルの電話番号を見かけることはないだろう。だが、このような子犬繁殖工場出身の犬が新聞やインターネット、または地元のペットショップで売りに出されていることに気づくことはあるかもしれない。

登録されたプロフェッショナルのドッグブリーダーとは違い、パピーミルはしばしば目立たないように操業しており、数百のデザイナードッグまたは雑種犬を、金を稼ぐために不衛生で非倫理的な状態で繁殖している。この問題は世界中に広がっている。

サザンクロス大学法学部の学生アンナ・ルドヴィックさんは動物愛護活動家で、パピーミルがどういうものなのかを社会により知らしめたいと望んでおり、人生における動物について人々にもっと考えてほしいと望んでいる。

アンナさんは、NRCLC(ノーザンリバー・コミュニティセンター)によって運営されているALEP(動物法と教育計画)に関わっており、パピーミルとその影響についてもっと知るために、917日にリズモアで開催される研究会に参加することを人々に勧めている。

「社会がより豊かになると、人々はステータスシンボルとしての特別な犬を欲しがるので、純血犬やデザイナードッグの需要が増えます」と、アンナさんは語った。

人々は、ラブラドードル(ラブラドールとプードルのミックス犬)やマルチーズとプードルのミックス犬などが理想的だと考える。というのは、アレルギー持ちの人間は、毛の抜けないラブラドールや賢くて訓練しやすいプードルを望むかもしれないからだ。また犬は、人口過密地域で狭いアパートに住む人たちに相応しいように、交配によって小さく作られる。遺伝的な奇形の確率が低い雑種犬が望ましいと思う人間もいる。だが、このような雑種もまた純血種から繁殖され、親犬も苦しむかもしれないのだ。

ミックス犬を欲しがる人間の数が増えることは、健康的な状態でほんの少しの子犬を繁殖する、登録された倫理的なドッグブリーダーが子犬の需要を満たすことができず、パピーミルが栄えるということを意味する。パピーミルを監督するためのオーソリティがないので、パピーミル繁殖屋たちはプロフェッショナルな繁殖家と同じように、地元の役所に登録しているかもしれないのだ。

「どのように動物が飼育されるべきか定義することは容易なのですが、パピーミルと倫理的なブリーダーの差別化を試みることは法律的に厄介なのです」と、アンナさんは話した。適正なブリーダーは犬舎へのあなたの立ち入りを歓迎するでしょうし、きちんと犬を世話しています。お客は、オリジナルの獣医の証明書や犬たちの生活環境を見ることができます。パピーミル繁殖屋は、お客を敷地内に立ち入らせることはありませんし、販売者として仲介人を使うかもしれません」

パピーミルでは、しばしば無差別なブリーディングが行われていて、見た目は健康そうな子犬だが若くして死ぬことが多かったり、成長して奇病を得たりする。私たちがより豊か社会に住むようになる一方で、動物福祉が犠牲となる。犬は人間との信頼関係を形成し、その保護、社会化、そして仲間つき合いを私たちに頼っている。もしペットを飼うならば、私たちは責任を持つ必要があるのだ。

アンナさんがタイへ旅したとき、彼女は鎖に繋がれるかケージに入れられ、運動も許されず、利益のために繁殖されるデザイナードッグを見た。アンナさんは日本で、日本のパピーミルで繁殖されたオリビアという名前のトイプードルを救出した。

「私は日本のペットショップで、月齢4か月のオリビアに出会いました」と、アンナさんは語った。「そこでは、子犬は小さなクレートかガラスケースに入れられていたのです。2か月後に再び訪れたとき、彼女はまだそこに──以前と同じ1m四方の箱の中にいたのです。私は彼女を一緒に連れて行かなければならないと思いました」

アンナさんがオリビアを獣医師に連れて行ったとき、オリビアの膝が脱臼していることがわかった。これはサブラクセーションという小型犬によくある問題で、遺伝子に配慮しない無差別な繁殖の結果である。オリビアはまた、耳ダニなどを含む他の問題も抱えていた。

「オリビアの膝の手術の成功率がかなり低かったので、体重管理ダイエットとペインコントロールを行っているのです。彼女は現在3歳ですが、終生の里親は見つかっていません。ペットショップ時代に彼女は小さな箱に入れられたまま、そこで食べて眠り排便をしていたので、排泄訓練を施すことが非常に困難なのです。そして他者との触れ合いが、箱に入れられたり出されたりというときのみだったので、適切な社会化がされていません。今私はオリビアに触れることはできますが、彼女はおどおどしていて信頼関係を築くことは困難だとわかりました。彼女が完全に立ち直ることは決してないでしょう。子犬期に良いスタートを持てなかった犬は、その後も順応することはないかもしれません。これはオリビアの生涯の重荷となるのです。もし私が彼女を連れてこなければ、彼女は繁殖に使われて問題のある遺伝子を子孫に伝えていたかもしれません」

動物福祉活動家のアンナさんと、パピーミルから彼女が救出した犬たち。


より多くの人間がキュートなデザイナードッグを買うようになり、その犬たちの訓練が困難だったり病気持ちで治療に費用がかったりすることがわかった場合、多くの犬が捨てられて地元の一時保管施設に渡されるようなことも増えている。

RSPCAと地元の一時保管施設は、里親を待つ純血犬とデザイナードッグで溢れています。オーストラリアでは毎日、役所が運営する施設で4分ごとに1匹の犬が殺されています」と、アンナさんは話した。

アンナさんは犬猫を望む人は、動物保護シェルターや地元のケンネルクラブに相談して倫理的なブリーダーを紹介してもらうことを勧めている。ペットショップからペットを買う場合は、ショップが捨てられた犬や猫をリホームしているかたずねるべきで、もしそうでないならばその店からは買わないことだ。

リズモア地区で唯一、救出された犬猫を販売している店が“Pets and Saddles”だ。この店のオーナーのルシンダさんは42年間この業界でビジネスをしていて、毎週3匹の犬と年間250匹の猫を受け入れている。ペットショップの動物が適正に飼育されるために、そして欠陥のある繁殖によるデザイナードッグが無差別に販売されないようにするために、ペットショップに対する新たな規制が必要であるとルシンダさんは確信している。

「現時点では、ペットショップで行われていることを監視することは社会に一存されています。私は、ペットショップがパルボウィルス持ちの子犬やダニ持ちの鳥を販売していることを知っています。そして、こういった動物に何も対処がなされていないのです。もしペットショップの動物が病気だったり世話をされていなかったりしたら、私たちはそのことをRSPCAに報告するべきです。というのは、もし多くの人々からの報告があれば、そういった店に対して何らかの処置がなされるでしょうから」と、ルシンダさんは述べた。

クイーンズランドRSPCAの主任捜査官のマイケルさんは、リズモアで間もなく開催されるパピーミル・ワークショップで講演する予定だ。マイケルさんは4年間 RSPCAでの経験があり、パピーミルに関する報告を定期的に調査している。彼は、警察の児童虐待調査班に在籍していた18年間での経験よりも、パピーミルで目撃する状況に対処するほうがキツイものだと感じている。

「母親犬と子犬たちは不潔でみすぼらしいキャットキャリーの中で飼われていて、そこには水もほとんど置かれていません。ネズミは爬虫類の餌として売られ、その稼ぎは犬たちのフードを購入するために使われるのです」と、マイケルさんは話した。

ある調査の後、悪臭を放つ不潔なパピーミルで、4人の捜査員が高濃度のアンモニアを肺に吸い込んだために病院に運び込まれた。

「私たちが手入れを行ったあるパピーミルは海外の香港市場に、15000-10,000ドル(39万円~77万円)で販売されるデザイナープードルを140匹飼育していた。このような連中は目立たないように行動して、収入を税務署に申告していないのです。動物販売に関する法律を厳しくするために政府の助けを得る必要がありますし、それは消費者のより安全な購買の助けとなるでしょう」

「しばしば私たちは、大きく膨張した下腹部に子犬を妊娠していたかもしれないメス犬に出会いました。彼らは盲目で、暗闇の中で生きて、子犬を産み、そしてその体に被毛がまったく残っていない犬もいます。最も悲しいことは、こういった犬たちに誰も近寄らないということです。というのは、彼らは社会化されておらず、ショック状態の中で心を閉ざしているのです。犬たちに獣医師の治療が必要な場合には、ブリーダーは治療するよりも簡単なので犬たちを殺し、繁殖に使う他のメス犬を入手します」

どのブリーダーが責任を持って操業しているかを追跡するために、RSPCAは人々に動物の生命に対する責任を持たせる法律の導入を望んでいる。この目的を果たすひとつの方法は、その動物のブリーダーが誰なのか身元を明らかにするマイクロチップの導入だろう。もし健康問題か遺伝的欠陥を持った動物が販売されていたら、これがブリーダーを突き止める方法となるだろう。

オーストラリアでは動物保護法は各州ベースのもので数多くのグループが存在する。例えばOscar's Lawは、パピーミル業界を監督することと動物の福祉を改善する法律を作ることを州政府に訴えている。クイーンズランド州政府は、”ブリーダー身元確認システム”の導入を考えている。今年初めに、ニューサウスウェールズ州の長官ドン・ページ氏は、同州初のコンパニオンアニマル・タスクフォースの設立を発表した。この専門調査団は動物繁殖業務やパピーミル、去勢避妊、そしてマイクロチップなどを含むコンパニオンアニマルの問題などを調査することになる。そして、ペットの福祉をより保護する、責任あるペットの所有を促進するイニシアティブを発達させるだろう。

これらの変化は動物保護支持者らによって歓迎されているが、アンナさんとマイケルさん両者の話では、最大の改革は、消費者がパピーミルから動物を購入する選択をしないことから始まるのだという。

「人々が正しい判断を行えるように、私たちはこれらの問題に関して社会の認知を高める必要がありますし、そうなれば、よりよい動物保護法を導入するように政府に働きかけることができます」と、アンナさんは語った。「社会が法を導くのであって、その逆ではないのです。未来は人々の手に委ねられているのです」


読後の感想:
英文は平易だが、かなり長い記事なのでどうしようか迷ったけれど、海外のペット事情に関するリアルな情報を伝えることができる意味のある記事なので掲載を決めた。でも、翻訳途中でどうしようもない暗い気分になって、思わず私の両隣で寝ていたウチのコーギーたちを抱きしめて頬ずりしてしまった……。
犬飼いの1人として、パピーミルという言葉は知っているしその意味もわかる。でも、自分なりの所感をきちんと述べられるほど詳しくはわからないので、俄か知識で感想を述べることは控える。これからこういった記事をもっと読んでひととおりの知識を得たら、そのときは自分の考えを書きたくなることもあるかもしれない。

英文記事:
How much is that designer doggie? Liina Flynn | 8th September 2011